若柳金成の商工業を紹介している『街の逸品』のバックナンバーです。
若柳と金成では様々な商売があり、いろいろな想いを持って営んでいます。
今回は、金成沢辺地区で営業している「千成(せんなり)寿司」の2代目、千葉盛博さんにお話を伺いました。
千成寿司は、先代である千葉さんの父が気仙沼での修行を終え、昭和40年に旧金成町沢辺木戸口に開業。
先代が名付けた【千成(せんなり)寿司】は、豊臣秀吉の「千成瓢箪(せんなりびょうたん)」と千葉の『千』と金成の『成』に由来しているとのことです。
その当時、金成町には居酒屋等の飲食店が少なく、また街に唯一の寿司屋ということもあり開店当初より店はにぎわい、昭和51年には場所を現在の沢辺往還下へ移転。
のちに高速道路が開通するなど町は活気に溢れ、多くのお客様が訪れていました。
店も軌道に乗り、常連客も出来てこれから順調に進んでいこうという矢先の平成7年、病気の為に先代が他界。
当時20歳だった千葉さんは塩釜での修行を約3年で切り上げ、千成寿司の2代目として母と店を経営していく事になります。
千葉さんは事業継承当時の様子を、『代替わりしたばかりの頃は常連さんから先代との違いを指摘されることもあったが、その言葉を参考にさせて頂きながら母と2人で工夫をし、常連さんや地元の皆さんに支えられながら営業をしていました。』と振り返ります。
千成寿司の2代目として店の経営について試行錯誤するなか、ある時、先代と同じ事をやっていては来客数を増やすのは難しいと考え、千葉さんは独自の千成寿司のスタイルづくりに取り組み、その中でまずは、寿司屋の敷居の高いイメージを変える為気軽に味を見て頂けるランチメニューを作成。
また、今までは寿司・鮮魚・和食と行ったイメージだった宴会の料理も、洋食や肉など若い人のニーズに応えるメニューも提供するようになり、今までのいわゆる寿司屋の営業スタイルから居酒屋風の営業スタイルへ徐々に変化させていきました。
しかし、それは質を落としたり、寿司屋のスタイルをなくすということではないく、『寿司屋としてのこだわりはこれからも残していきたいと思っています』と語る通り、米は金成の契約農家にお願いして作ってもらっている環境保全米のササニシキ、マグロは奄美産の本マグロ等食材へのこだわりが伺えます。
また、千成寿司には握りやランチ以外は固定したメニューはなく、予約する方達の人数やどのような年代の方の集まりなのか、予算はどれぐらいなのか等簡単な情報を教えてもらい、その日のいいものを食べて頂く『お任せ』のスタイルを提供。
これは先代が培ってきた寿司屋としての経験に基づいた技であり、それを受け継いで行くことも千葉さんのこだわりの一つだと感じました。
『今までのやり方を否定するのではなく、新しいものを吸収し、従来の方法に取り入れていく柔軟な考え方でお客様に新たなサービスを提供することができました』と語る通り、受け継ぐものと 新しく取り入れるもの、そして寿司職人としてのこだわりのバランスの良さが現在も地域でひいきにされる理由の一つなのかもしれません。
2代目として新たなスタイルを確立した千葉さんに今後の千成寿司について伺いました。
『今後は今までの様にその時々の旬の食材を大切にし、食べることで季節を感じてもらえるような料理を提供して行きたいと思っています。昨今、外食チェーン店の進出や後継者不足により地元の飲食店が減ってきているので、今まで以上に地域との繋がりを大事にしたお店作りをしていきたいと思っています。これからも寿司屋のこだわりを持ちつつこれからも柔軟に対応していきながら3代目・4代目と続くような店になっていけば良いと思っています。』とのこと。
これからも2代目として培った独自のバランス感覚と地元地域との絆を大切にした店作りでお客様に千成寿司の味を提供していくことと思います。